越後長岡城下年中行事 二月 狗の子朔日

朔日 狗(いぬ)の子朔日といふ。


〇團子にて十二支之形を拵へ、障子之縁(ふち)に並べおく。
又團子を捻り、餡を付て食す。
是を喉縊り團子といふ。出代り之奴婢、主家之善悪を
他言すまじき為なりといふ。
〇御家中奉公の宛人、年番蔵にて鬮を引。
反町本『懐旧歳記』より


インノコ朔日については、柏崎のインコロがそれと思われ、
和菓子職人でもある方が、保存のため、指導もされている。
県内では、「犬の子」をインコロ、イゴノコ、チンコロなどと呼ぶ。


十日町のチンコロを長年つくっていた関口さんの
おばあちゃんのお話をお菓子かわら版 Vol.10」に掲載。


喉縊り団子は、中越地区を中心に、庄屋と小作など
契約関係にかかわる儀礼に伴っているようにも思う。
また、カラコ団子などといい、くず米でつくることも。
会津の農耕儀礼にも見られる。

この日は「出がわり朔日」とも言われ、団子を
「口はめ団子」「轡団子」などともいう。
この団子を食べたら、雇われた家のことは、口外しないという
暗黙の了解もあったという。
半年後の八朔にも、似たような事例が見られる。
平安時代より「除目の日」とされ、役人の役職を決められた日だ。
さらに、馬の献上や、民間では、しんこ細工をともなう行事がある。
岡山県の牛窓の「ししこま」は「インノコ」と対応するようにも思われ、
興味深い。



また、「しんこ(団子)をねじって餡をつける」ことは、
和菓子の歴史の中でも、最も気になることのひとつ。
「しんこ」と「ねじり」の関係は複雑に展開しているよう。
京都では、ねじりのしんこが定番。
ひねったしんこを「やせうま」とも、「白糸餅」とも言った。
「白糸餅」に小豆を載せたデザインのものを「藤の花」と言い、
これは八朔の儀礼と深く結びつく、縁起ものでもあった。



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