新潟日報夕刊エッセイ「晴雨計」 第四回 お地蔵さまのおしゃれ

お地蔵さまのおしゃれ 
新潟日報 2012.8.24 夕刊掲載

 24日は、お地蔵さまの日。特に8月23
 ・24日には、全国各地でお地蔵さまのお
 祭りが行われています。西日本では「地
 蔵盆」と呼び、子どもたちが中心となり、
 地域の祭りとしても盛んです。なかには、
 年に1度、お地蔵さまをきれいに洗い、
 お化粧直しをする「化粧地蔵」の風習が
 ある地域も多いようです。   
 京都などでも、お顔を白く塗り、紅を
さしたり、衣を着せたり。初めて白塗り
のお地蔵さまを見た時は、その異様さに
度肝を抜かれましたが、子どもの初節句
にするようなよだれかけや前かけ、米寿
にかぶるような頭巾をお地蔵さまにつけ
るのは全国的。昔話の「笠地蔵」のおじ
いさんといい、どうもお地蔵さまをほっ
てはおけないようです。
お地蔵さまのよだれかけで、私が思い
浮かべるのは、新潟に多く残る木喰仏の
「襞襟のようなもの」。屏風絵などに描
かれた南蛮人の飾り襟に似ています。当
時、南蛮人を遠方より来たる「福人」と
みた風潮と関係あるのでしょうか? 襞
襟は、当時の最先端ファッションで、エ
リザベス女王の肖像画でも有名です。と
ころが、今エリザベス・カラーというと、
犬や猫用の治療的な装身具と知り、思わ
ずうなってしまいました。
 五泉市の文化財でもある子安延命地蔵
尊は、身の丈3mの大きな石仏で、赤い
頭巾の上に黄色の半月型のアップリケの
ようなものがつけられています。大祭に
は紅白のお団子を供え、お下がりの「お
みこく」は7粒ずつというのも気になり、
2年前の23日に行ってみました。
 午前中からものすごく暑い日でしたが、
20人ほどの方が集まり、1日かけてお団
子づくりをされていました。
 世話人会まとめ役の林幸雄さんは、「お
地蔵さんは毎日違う表情をするんだよ。
朝の4時過ぎくらいが一番よくわかる。
あー今日は泣いているとか、笑っている
とかってね」とおっしゃいます。頭巾の
黄色い半月型のものは、「飾りだよ。月
を表すとも伝え聞いているけどね」との
こと。帰りがけには、「自分でお地蔵さ
んにあげて、拝んでから持って帰りなさ
い」と、できたばかりの「おみこく」の
ひと袋をくださいました。
 おしゃれなお地蔵さまに出会うと、地
 域の方々をまもり、また、まもられてい
 るのだなぁと感じます。



五泉市の子安延命地蔵尊については、
お団子のことに関しては、

子どもの「初宮詣り」にも襞の縁飾りのついた
よだれかけや、「稚児頭巾」などを被った。
また、五泉市と接する東蒲原地方では、
喪服の被りものを「カンムリ」といい、
白、赤、黄色などの三角の晒を被るという。
今は「カンムリ」の風習がどれほど残っているかは
わからないが、お地蔵さまの頭の飾りにも通じること
かもしれない。この「カンムリ」については、
新潟県立歴史博物館で今年4月から6月に催された
「かぶりものと女のモノ語り」展の図録に詳しい。
京都の街角でよくみかけるお地蔵さま 一乗寺あたりにて
東京目黒の蟠竜寺の境内にも「おしろい地蔵」と
呼ばれるお地蔵さまが祀られている。
このお地蔵さまにおしろいを塗り、余りを自分の顔に
つけて祈願すれば必ず美人になるといわれている。
境内には、他の石仏と並んで、顔のあたりが白くなった
お地蔵さまが、ひっそりと立っていらっしゃる。
襞襟はいろいろあるが、1610年に描かれたオランダ派
絵画の「貴族の家族の肖像」という作品では、
家族全員が襞襟をつけていて、印象的。
当時いかに流行したかがわかる。
襞襟のようなものをつけている木喰仏は
「木喰仏 その3 柏崎枇杷島十王堂」
10月5日から1ヶ月間、南魚沼市の池田記念美術館に
普段は見られない南魚沼の木喰仏も含め一堂に会す。
詳しくは池田記念美術館へ。
第5回のテーマは、「八朔の馬、2月の犬」

熊本の地蔵祭りの、子どもたがつくる花ののれんが可愛らしい。
PDF「熊本の祈りと感謝ー民俗写真家の眼差し」↓p24参照
http://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/61674.pdf
地蔵盆は、明治の以降の呼び名、もとはどこも地蔵まつりと言った。

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