越後長岡城下年中行事 三月三日

三日 桃の節句といふ。
上巳御祝儀。諸士一統登城、退出之節、列座方廻勤、
夫より親類懇意之方へ相互に節句禮相勤。
手遠之親戚へは前日にも相越す。是を節句の取越といふ。
登城は五ツ半時。
此日、女の節句とて處女(むすめ)打集り、
近隣の雛を身にゆき、或は手鞠をつきて遊ぶ。
東都にては手鞠遊は正月なり。
又草餅餅草無之時は靑粉を以て草に換ゆ。
干鱈を食し、白酒・甘酒を飮を嘉例とす。
男子も土手廻りとて、城岡の土手・草生津大土手等へ
遊歩するを樂とす。
去年十月頃より日々寒風、雪穴ともいふべえき住居も、
此節頃雪もむら消へにて初而晴天を見る。又遠山の眺望甚愉快也。
實に伏龍の昇天をする思ひなり。
此節頃より凧を上て兒童の遊びとす。
凧は東都にては正月なれ共、越後は積雪故雪の消ゆるを待て上る。
又蒲原郡三條・白根・燕・巻・曽根遍は五月節句に凧を上る。
男子のみにこれなく、壮年のもの大凧を上ゲ糸をからみ勝敗を挑て樂とす。
其賑ひ凧遊びの魁たり。

反町本『懐旧歳記』より

絵図には、雛段に、お内裏様が二組その下に三人官女、立雛、
武者人形などなど、朔日の項に記された供え物が描かれている。
様々な人形に混じり、羽子板と羽、毬なども飾られており、
雛段前には、婦女子らが、飲食や手毬つきをする様子が描かれる。

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