「ふきよせ」その8 会津の「かるやき」

『ふるさとの菓子(北海道東北篇)』(東北菓子食料新聞社 昭和31年)に、
輪種米菓「会津特産 かるやき」
あの有名な長門屋さんの製品として、紹介されている。
一部抜粋すると、


このかるやきは古くから奥羽、関東地方の特産銘菓で
繭型の輪種を軽く浮かしたサックリと歯当りのよいもので、
柚子、醤油、薄塩などの砂糖掛けした風味は得も云われぬ
ものである、この製品は現在ではこの会津だけに僅かに
伝承されるものであって他の地方では殆ど見られなくなっている。


この本の記述の中で、いくつか判明することがある。
1、「輪種」であること。
「りん掛け」は、江戸時代よりよく使われた「製菓用語」であり、
砂糖液をつくり、種を熱しながら液を掛けて、菓子に砂糖衣をほどこす製法。
(現在、回転釜で液を掛ける金平糖なども、「りん掛け」といえる。)
この場合、かるやきに輪掛けしたものを、さしていると思われる。


2、「繭型」、「軽く浮かしたサックリと歯当りのよい」と言う点が、
まさに「ふきよせ」である。
これを読んで、私が懐かしい長岡の「ふきよせ」は薄い醤油風味の
甘いもので、茨城の「うすじお」は、ここで言う「薄塩」らしいこと。


3、この時点で、会津だけに残るとされているが、
長岡周辺で、少なくとも、この本より後に生れた私がよく食べており、
昭和40年代半ばまでは、「ふきよせ」の全盛期だったように思う。


「輪種」という点に少し疑問が。
りん掛けは、砂糖液を掛けるのが一般的であるが、
「ふきよせ」は一度液状の蜜に浸してから、砂糖にとって、
砂糖(粉糖、クラニュー糖、上白糖など)をまぶす、という点で
少し違いがある。
『御前菓子図式』の「唐棗」の製法がわかりやすい。

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