新潟日報夕刊エッセイ「晴雨計」 第25回(最終回) 越の国の天神さま

越の国の天神さま
新潟日報 2012.1.25 夕刊掲載

 越前から越後にかけて、代々伝わる天
神さまを正月にお祀りする地域がありま
す。つい先日、高岡と柏崎で、家庭での
天神さま飾りを見学させていただいてき
ました。どちらの町でも、1225日に、
所蔵する天神さまのお軸や木像、土人形
を飾り、鏡餅や魚(高岡は蟹や鯛、柏崎
は鮭)などのお供えをします。そして、
正月、小正月を天神様に見守られて過ご
し、今日がお送りする日です。
 高岡には、主に金沢の旧家でみられ、
「天神堂」と呼ばれる、神社の木製模型
のような、組み立て式のお宮を受け継い
でいるお宅もありました。
 その「天神堂」には、玉垣、鳥居、狛
犬、お鏡、燈籠、神主や随身などが配さ
れ、まるでドールハウスのようです。も
ちろん本殿には天神像が納められますか
ら初詣は自宅で可能?! 金沢などの新
年の「辻占」も、家に天神さまがいらし
てこそだったのかもしれません。
 小正月に、五穀豊穣を祈る「まゆだま」
を飾る家では、そこに天神さまもいらっ
しゃるわけです。天神さまが、年神さま
であり、農耕()の神さまでもあると実
感できるような光景です。実は、枝にさ
げる餅種製のまゆだま飾りにも、天神さ
まはいらして、俵や小判などに混じり、
ゆらゆらされています。
 そのほか、子どもたちが集まり、習字
や飲食をともにする、寺子屋のなごりの
ような天神講をするところも多く、お祀
りのしかたは本当にいろいろです。
 さらに2月。長岡から新潟にかけて、
24日を宵宮として「春を呼ぶ天神さま」
をお祀りする地域があります。旧暦なら
ば春分にも近く、農作業を始める頃でし
ょうか。この地域の特徴は、鯛や松竹梅
などを象った菓子を供えること。一部地
域では、天神さまのお姿さえ菓子に! 
その上驚くことに、新津の家々では、座
敷の火鉢で線香花火をするため、昔は町
に煙がたなびいたものだとか。なにかお
とぎ話のようですが、これは、京都や東
京にある五條天神社の節分の神事で、薬
草「うけら」を焚いて祓い清める、その
煙に通じるのではないかと感じています。
 天神さまは菅原道真公でもあるとされ、
学問の神さまとして知られます。天神さ
まを慕う私ですが、文章は稚拙。こんな
私に半年間おつきあいいただき、本当に
ありがとうございました。皆さまに天神
さまのご加護がありますよう!

天神堂などについては、高岡「山町筋の天神様」で。
まゆ玉飾りの天神さまは、
「いとおかし*長岡小正月のまゆだま」

線香花火は、この時期お菓子屋さんでも売っている。
新津(現・新潟市)の宵宮の線香花火については
「いとおかし*天神さんと線香花火」
または、実際に体験した方のお話は、
「越後の天神信仰5*春を呼ぶ天神さま」

また、加賀藩の前田家が最初に領地として与えられた越前武生では、
お彼岸に天神さまを祀ると聞く。
越の国の天神さまは、季節の節目に祝う神さまのようだ。

*訂正*
調べるうち、2月25日に天神さまを祀る地域も、昔は1月25日に行われていたようだ。
「春を呼ぶ」という天神さまという気持ちから、季節を重視し、旧暦時代と同じ季節に合わせていると思われる。
現在の2月25日にお祭するのは、菅原道真の命日にあわせているのではなく、旧暦時代の1月25日の季節感を大事にしているようだ。

コメント

人気の投稿