新潟日報夕刊エッセイ「晴雨計」 第19回 サンタ~ルチア♪

サンタ~ルチア♪
新潟日報 2012.12.14 夕刊掲載

 昨日、12月13日は、聖ルシア(サンタ
・ルチア)の日でした。北欧では「ルシ
ア祭」をします。何本かのろうそくが灯
る冠をかぶったルシア役の少女を中心に、
少女たちがろうそくを手に「サンタ・ル
チア」を歌う様子が有名です。もともと
冬至祭でもあったルシア祭が、明るさの
単位「ルクス」と同じ語源を持つ聖ルシ
アの日に当てられたことは偶然ではない
でしょう。そして、北欧では育たないサ
フランで、黄色く染められたパンが焼か
れます。光を少しでも感じたい北欧なら
ではの行事ですね。
 この聖ルシア、バルセロナでは、特に
お針子さんたちの守護聖人とされ、13日
には、巨大なハサミのかたちのお菓子が
街のお菓子屋さんに続々と出現!
 と同時に、この日はクリスマスの準備
を始める日。大聖堂前の広場では、クリ
スマス市が始まり、人々はヤドリギや大
きなもみの木などを買い求めるのです。
 ヤドリギはスペイン語で「ムエルダゴ」
と言うのですが、幸運に「かぶりつく」
「かじりつく」という意味があると教え
てもらいました。冬になり、すっかり葉
を落とした大きな木の枝のあちこちにポ
ンポン状になって、かじりつくように寄
生しているのがヤドリギです。グリーン
の葉に半透明の白い実が美しいヤドリギ
と常緑の松を一緒に束ねた、門松のよう
な縁起ものが売られ、人々はそれを贈り
合い、戸口に飾ります。
 そして、もっともユニークな縁起もの
が「薪のおじさん」です。丸太の切り口
に顔を描き、赤い三角帽をかぶせてあり
ます。このおじさんを「うんちしろ!」
と囃して棒で叩くのです。すると、幸運
や豊穣、実際にプレゼントまでもたらし
てくれるという、福の神みたいな存在で
す。フランスでは、この薪がなんとケー
キに! そう、この頃日本でも見かける
ビュッシュ・ド・ノエルです。
 さて、日本でも13日は「ことはじめ」
と言われ、お正月の準備をはじめる日と
されていました。お正月の門松を切りに
山へ入ったのもこの日だったようです。
 木は生命力の象徴。新しい年を迎える
にあたり、木を家に持ち込んだり、玄関
に立てたりすることで、魔除けや、五穀
豊穣・子孫繁栄のおまじないとしたので
はないのでしょうか? その気持ちには
国境はないようです。

かたちにより呼び名がある。Sの字型は「ルッセカット」
北欧、スウェーデンのルシア祭に欠かせないサフランパンについては、
panaderiaというサイトに連載中の、佐々木千恵美さん執筆の旅日記
その9「スウェーデンのアドヴェント~ルシア祭とサフランのパン」
というページで、詳しくご覧いただけます。
サフランが贅沢に使われている。色と香りが特別。
また、スウェーデンのスカンセン野外博物館制作の動画で、
ルシア祭の準備や、パンを焼く様子がご覧になれます。



バルセロナの巨大なハサミのかたちのお菓子や、
「薪のおじさん」やクリスマス市については、エピファニアのページで。

薪のおじさんを叩く様子も動画でご覧になれます。

「ムエルダゴ」については、
「いとおかし*カタルーニャのネウレスとムエルダゴ」
さらに、
「薪のおじさん」をさらに擬人化した、うんちをする人形については
「いとおかし*うんちをするおじさん」
写真 下のサンダル型の陶器に、松などの枝と白い実のついたヤドリギ「ムエルダゴ」
上は春の「枝の日(棕櫚の日曜日)」に、市で売られる棕櫚の葉でできた十字架。


第20回のテーマは、「クリスマスの生誕劇」

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